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●星野道夫インタビュー(「City Voice 市川の街から No.17」1995.春号) 星野さんの子供の頃のことから話していただけますか? 生まれたのはJR本八幡駅のすぐ近くなんです。駅の構内放送が聞こえるぐらいでしたから。 小学校も市川なんですよね。 ええ。平田小学校です。中学・高校は東京の方へ通っていました。 当時の思い出があったら聞かせてください。 その頃の市川は紙芝居の人が来るような空き地があちこちにありましたね。小学生の頃は野球が好きで、野球ばっかりやってました。ただ、一つ覚えているのは、昔は映画館の前に写真が張り出されていましたよね。その写真が次の映画に替わる時にいらなくなるっていうんで、よくもらいにいきました。 モノクロのスチール写真ですよね。 そうです、そうです。それで、当時はチャンバラ映画とかその手のものばっかり観ていたんですが、ある時、自然の映画を観て本当にびっくりさせられたんです。『チコと鮫』っていう映画だったんですが、南太平洋の自然を現地で撮影した映画で、子供ごころに『自然ってすごいんだな』って感じたのがすごく強い印象で残っていますね。 子供の頃の鮮明な思い出として…。 ええ、そうです。でもね。大人になってもう一度みたいなと思っていて、二十歳過ぎに何かの機会に観たんです。ところが、全然感動しなくて(笑)。子供の頃の意識が強すぎたのかもしれません。 自然に対して意識的に興味を持ちだしたのはいつ頃からなんですか? 高校ぐらいからでしょうか。山が好きで、登ったり、本を読んだりしているうちに、何故だか北海道に対する憧れがすごく強くなったんです。漠然とした〈北の自然〉に対する憧れという感じで。それから、これも何故だかわからないんですが、『アラスカに行ってみたい』って気持ちが湧いてきて、十九歳の時に初めてアラスカへ行ったんです。 大学在学中の時ですよね。 はい。それで学校を卒業して二回目に行った時には、向こうで暮すつもりでした。 アラスカを拠点にして生活していこうということですか? 生活というよりは、写真を撮りながら、旅をしたい、という気持ちの方が強かったように思います。ですから、実際には住んでいるんですが、旅行者という感覚だったと思います。五年程前に向こうに自分の家を建ててからは、随分と意識が変わりましたが… 現在もご実家は市川にあるんですよね。 そうですね。この本だから言うんじゃないですが(笑)、市川に実家があるというのは、なんとなくホッとするんですね。僕の暮らしのベースは確実にアラスカなんですが、市川という街からは離れたくない、という気持ちがすごく強いですね。 それは、なぜでしょうか。 うーん。自分の育った街だから、ということはあるのでしょうが、やはり身近にある自然、生活に密着した自然が街なかに残っているからかもしれません。 アラスカで実際に生活して感じることをお聞きしたいのですが…。 本当に昔のままの自然が残っています。人間もそうです。狩猟生活が主ですから、日々の生活を通して自分の一生がすごく短いんだ、ということがストレートに実感できると思います。逆に都会で暮していると自分の命に対する感覚が希薄になっているような気がするんですが… 確かに都市に住んでいると、いつしかそういう当たり前のことを忘れてしまうのかもしれませんね。 ですから、もし僕が若い世代にメッセージを送れるとしたなら、生と死の感覚というか、自分の一生はすごく短いものなんだということをできるだけ若いうちに実感してほしい、ということになるかもしれません それは、星野さんが写真や文章を通して伝えたいこととも関係があるのでしょうか。 そうですね。僕は自然に対する興味っていうのは、最終的には人間に対する興味だと思うんです。もっと突き詰めてしまうと、自分が生きていることに対する興味なのかもしれません。だから、アラスカで撮った写真や書いた文章を通して伝えたいことも、別に『大自然がいっぱい残っているんだ』ということではないんです。アラスカに住んでいる人も東京に住んでいる人もどこかでつながっていて、共有できる部分があるはずです。基本的に人間と自然との関わりは、どこに住んでいても同じなんじゃないでしょうか。ただ、アラスカの場合は、そのスケールが大きいということはありますが… なるほど。それでは、今後のことを聞かせてほしいのですが。 今は少しずつですが、アラスカの先住民のお年寄りたちの写真撮っているんです。彼ら八十〜九十歳代の人たちは、本当にすごい時代を生きているんです。一人ひとりの一生が古代から近代、現代へひとまたぎで来ているんですね。それも、ものすごいスピードで。その人たちをちゃんと記録しておきたいという気持ちが強いんです。彼らは次の世代に対するメッセージを必ず持っているはずですからね 顔に刻まれた記憶、歴史ですね。写真を観るのが楽しみです。今日は本当にありがとうございました。 |
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